DSNデザイン Interview

ひらがな一字に3日かける──書体デザイナー・永井朋子の校正紙

本文用の明朝体のかなを、ひとりで設計している永井朋子さん。描く字は約400。机に広げた校正紙には、赤ペンで「右払い 0.5ミリ長く」といった指示がびっしり書き込まれていた。

木の机に広げたひらがなの校正紙。赤ペンの書き込みがあり、ルーペと金属の定規が置かれている
出力した校正紙に、ルーペで見ながら赤字を入れる。「愛」や「風」は、かなとの大きさの釣り合いを見るために並べた漢字。撮影:編集部

今つくっているのは、どんな書体ですか。

本文用の明朝体の、かなの部分です。漢字は既存の書体と組み合わせる前提で、ひらがなとカタカナ、約物を合わせて400字ほどを描いています。文庫本くらいの文字の大きさ、9ポイント前後で読まれることを想定しています。

画面で描いて、紙で直す

校正紙に出すのはなぜですか。画面で拡大したほうが、細かいところまで見えますよね。

拡大すると、見えすぎるんです。実際に読まれる大きさで見ないと、線の太さの違いや字の傾きは判断できません。だから週に一度、全部の字を9ポイントと24ポイントで出力して、赤を入れます。直すのは画面の上ですが、判断するのは紙の上です。

一字にどのくらい時間をかけますか。

最初の形を描くのは1時間くらい。そこから直して、ほかの字と並べて、また直す。「の」「を」「る」のように文章によく出てくる字は、3日くらいかかります。「ゑ」は半日で終わりました。

よく使われる字ほど、時間をかけます。読む人が何千回も目にする字なので。

永井朋子

隣に来る字で、形が変わる

赤字でいちばん多い指示は何ですか。

字の大きさです。たとえば「は」と「き」を同じ枠に描いても、「き」のほうが小さく見える。だから「き」を少し大きくする。でも大きくしすぎると、今度は「す」と並んだときに目立ってしまう。一字を直すと、ほかの字との関係が全部変わるので、きりがありません。

完成はいつごろの予定ですか。

来年の春です。最後の2か月は、実際に小説を一冊組んで、読みながら直す期間にしています。読んでいて引っかかった字には付箋を貼る。去年の試作では、付箋が140枚になりました。

  • 書体名称未定(本文用明朝体のかな)
  • 収録字数約400字
  • 発売予定2027年春

この記事はJUNKBRANDINGのデモ用に作成したものです。登場する人物・団体・施設・発言は、すべて架空です。

編集部・デザイン担当

戸川まどか

1990年生まれ。デザイン事務所で書籍の組版を担当したのち、2021年に編集部へ。書体、印刷、看板の記事を主に書いている。