この集落には以前、プレハブ平屋の公民館があった。古くなって建て替えが決まったとき、区長から宮内さんに届いた依頼は「鍵を管理しなくていい建物にしてほしい」というものだった。
鍵を誰が持つか
鍵の管理が問題になっていたんですか。
前の公民館の鍵は区長さんが持っていて、使うたびに家まで借りに行く必要があったんです。そうなると、だんだん使われなくなる。年に数回の総会と、選挙の投票所くらいでした。最初の打ち合わせで「鍵をなくす方法はないか」と言われて、それなら扉をつけなければいい、と考えました。
壁もなくすことは、すぐに決まりましたか。
いえ、最初は三方を壁にして、一面だけ開ける案でした。でも模型を持って集落を回ったら、田んぼで作業していた人に「壁があると、中に誰がいるか分からない」と言われて。外から中が見えないと、入りにくいんです。それで全部外しました。
雨と雪をどうするか
壁がないと、雨が吹き込みませんか。
吹き込みます。だから軒を深くして、柱から1.8メートル外に出しています。床は土間なので、濡れても困らない。テーブルと椅子はアルミ製で、出しっぱなしにできるものを選びました。冬は使わない前提です。12月から3月までは雪が積もるので、そもそも誰も来ません。
一年のうち8か月使えればいい、と区長さんに言われて、だいぶ気が楽になりました。
宮内恭平
子どもが自転車で寄っていく
完成してから、使われ方は変わりましたか。
小学生が、下校の途中に寄っていくようになりました。自転車を止めて宿題をしたり、ただ座っていたり。夏は農家の人がお昼を食べに来ます。総会も今はここでやっていて、マイクを使わなくても声が届くそうです。
設計者として意外だったことはありますか。
掲示板がいちばん見られていることですね。柱に板を一枚付けて、回覧板の内容を貼れるようにしたんですが、みんなそれを見に来る。建物の中でいちばん小さい部分なのに。
- 所在地長野県下伊那郡
- 竣工2025年10月
- 構造木造(カラマツ)、土間床
- 建築面積65.6平米
この記事はJUNKBRANDINGのデモ用に作成したものです。登場する人物・団体・施設・発言は、すべて架空です。
