ARC建築 Interview

壁をつくらなかった集会所──設計者・宮内恭平に聞く

長野県の山あいの集落に、屋根と柱だけの集会所ができた。農作業の途中でも立ち寄れるように、扉も壁もない。設計した宮内恭平さんに、壁をなくすまでの経緯を聞いた。

田んぼの脇に建つ、壁のない木造の集会所。屋根の下にテーブルと椅子が置かれ、自転車が止めてある
田んぼの脇に建つ集会所。屋根は8.1メートル四方で、柱には地元の山から切り出したカラマツを使った。撮影:編集部

この集落には以前、プレハブ平屋の公民館があった。古くなって建て替えが決まったとき、区長から宮内さんに届いた依頼は「鍵を管理しなくていい建物にしてほしい」というものだった。

鍵を誰が持つか

鍵の管理が問題になっていたんですか。

前の公民館の鍵は区長さんが持っていて、使うたびに家まで借りに行く必要があったんです。そうなると、だんだん使われなくなる。年に数回の総会と、選挙の投票所くらいでした。最初の打ち合わせで「鍵をなくす方法はないか」と言われて、それなら扉をつけなければいい、と考えました。

壁もなくすことは、すぐに決まりましたか。

いえ、最初は三方を壁にして、一面だけ開ける案でした。でも模型を持って集落を回ったら、田んぼで作業していた人に「壁があると、中に誰がいるか分からない」と言われて。外から中が見えないと、入りにくいんです。それで全部外しました。

雨と雪をどうするか

壁がないと、雨が吹き込みませんか。

吹き込みます。だから軒を深くして、柱から1.8メートル外に出しています。床は土間なので、濡れても困らない。テーブルと椅子はアルミ製で、出しっぱなしにできるものを選びました。冬は使わない前提です。12月から3月までは雪が積もるので、そもそも誰も来ません。

一年のうち8か月使えればいい、と区長さんに言われて、だいぶ気が楽になりました。

宮内恭平

子どもが自転車で寄っていく

完成してから、使われ方は変わりましたか。

小学生が、下校の途中に寄っていくようになりました。自転車を止めて宿題をしたり、ただ座っていたり。夏は農家の人がお昼を食べに来ます。総会も今はここでやっていて、マイクを使わなくても声が届くそうです。

設計者として意外だったことはありますか。

掲示板がいちばん見られていることですね。柱に板を一枚付けて、回覧板の内容を貼れるようにしたんですが、みんなそれを見に来る。建物の中でいちばん小さい部分なのに。

  • 所在地長野県下伊那郡
  • 竣工2025年10月
  • 構造木造(カラマツ)、土間床
  • 建築面積65.6平米

この記事はJUNKBRANDINGのデモ用に作成したものです。登場する人物・団体・施設・発言は、すべて架空です。

編集部・建築担当

加納圭

1983年生まれ。設計事務所に7年勤めたあと、編集の仕事に移る。図面を読んでから現場に行くことにしている。団地と小さな公共建築の取材が多い。