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調査ノート

円を20個並べたポスターの版を数える

1968年の市民プールのポスターは、何枚の版で、どの順に刷られたのか。インキの重なりとずれの方向から確かめた記…

文 宮田 遥 (印刷技法の調査)

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ポスターの拡大。赤い円の周りの黒い破線の輪が、円の中心から右下にずれている。
部分:朱の円と墨の破線のずれ。刷り順の判定に使った箇所。

市民プール開場告知ポスター(JB-G-0102)は朱と墨の2色で刷られている。寄贈時の調書には「3色刷り」とあったため、版の数と刷り順を確かめ直した。結論は、版は2枚、刷りは2回である。

調書の「3色」はどこから来たか

寄贈時の調書を書いた担当者に確認したところ、朱と墨が重なった部分の暗い赤を、3つ目の色として数えていたことがわかった。シルクスクリーンのインキは不透明度が高いものが多いが、このポスターの墨はやや透けており、朱の上に重なると赤みの残った黒になる。

ルーペで重なり部分を見ると、朱の層の上に墨の層が乗っており、別の版で刷った第3の色ではない。調書は「2色刷り(朱・墨)」に訂正した。

刷り順を、ずれの向きから推定する

20個の朱の円と墨の破線の輪の位置関係を、所蔵する3枚について計測した。3枚とも、墨の輪は朱の円に対して右下に0.8〜1.2mmずれている。ずれの向きが3枚で同じことから、版の位置合わせ(見当)は刷りの段階ではなく、版を作る段階で生じたずれと考えられる。

所蔵番号横方向のずれ縦方向のずれ墨のかすれ
JB-G-0102-1右 1.1mm下 0.9mmなし
JB-G-0102-2右 0.8mm下 1.0mm右上の3個
JB-G-0102-3右 1.2mm下 1.2mmなし
所蔵3枚の計測値(各20か所の平均)。

墨の破線の端が朱の上でわずかに盛り上がっていること、朱の円の縁に墨が入り込んでいないことから、朱を先に刷って乾かし、墨を後から重ねたと判断した。

同じデザイナーの包装紙と比べる

デザインした野々村 亘は、2年後に三協百貨店の包装紙(JB-D-0407)を手がけている。包装紙はオフセットの朱1色だが、波線の間隔を縦横で等しくとる考え方は、プールのポスターで円を等間隔に並べた構成と共通している。

一方で、ポスターの円は直径を2種類混ぜて並びに揺らぎを持たせているのに対し、包装紙の波線はすべて同じ大きさである。包む向きを問わない図案にするため、揺らぎを取り除いたのだと考えている。

今後の調査

市内の看板店の廃業時の資料に、このポスターの版下が含まれているという情報がある。版下が確認できれば、破線の間隔を手で描いたのか、型紙を使ったのかが判断できる。確認できた時点で、収蔵品の記録を更新する。

この記事で扱う収蔵品