曲げ木のスタッキングチェア(JB-P-0207)の図面では、積み重ねた6脚のうち6脚目だけが朱で描かれている。これが「6脚まで積める」という意味なのか、「6脚目で問題が起きる」という意味なのかを、現存品で確かめた。
試作記録の数字
北谷木工所の作業日誌には、1966年8月に「積み 五脚 可」、同年10月に「積み 六脚 背当たる 後脚 曲げ 三分」という記述がある。三分は約9mm。6脚目で背もたれが前の椅子に当たったため、後脚の曲げを9mm変えた、と読める。
図面の日付は1966年10月で、日誌の2回目の記述と同じ月である。朱の6脚目は、変更後の寸法で6脚目が当たらないことを確認するために描かれたと考えるのが自然だ。
現存品で確かめる
県内の公民館2館に、同じ椅子が計14脚残っていた。製造時期の異なるものが混ざっている可能性があるため、まず後脚の曲がりの寸法を全数計測した。
| 保管場所 | 脚数 | 後脚の曲がり(座面後端から) | 積めた脚数 |
|---|---|---|---|
| A公民館 | 8脚 | 62mm | 7脚 |
| A公民館 | 2脚 | 53mm | 5脚 |
| B公民館 | 4脚 | 62mm | 7脚 |
曲がりが53mmの2脚は、日誌の変更前の寸法と考えられる。62mmの椅子は7脚まで積むことができ、8脚目で全体が前に傾いた。
6脚目の朱が示すもの
計測の結果から、図面の6脚目の朱は「6脚目まで当たらない」ことの確認だったと判断した。実際の製品は図面の想定より1脚多く積めたことになる。
収蔵品の記録には「積み重ね:6脚(図面)、7脚(現存品で確認)」と追記した。8脚以上積めない理由は背もたれではなく重心の位置にあるため、図面からは読み取れない。

