駅名標の原図(JB-T-0308)の余白には、鉛筆で「かな字面 88%」と書かれている。写植文字盤の原字を描き(JB-T-0315)、現在は案内表示用の数字(JB-T-0322)などを設計する久住 健さんと、原図を見ながら話した。聞き手は大庭 志保。
駅名標の原図を見て
原図を最初に見たときの印象を教えてください。
仮名の線がかなり太いことに驚きました。漢字と同じ太さで描いてある。仮名は画数が少ないので、漢字と同じ太さにすると黒っぽく見えるんです。それを承知のうえで太さをそろえているのは、遠くから見たときに仮名だけがかすれて見えるのを避けたかったからだと思います。
格子の線は何のためのものでしょうか。
駅名標の実物の寸法に合わせた格子です。駅名の文字数が違っても、仮名の行の長さがどのくらい変わるかを確かめるために引いたんでしょう。格子の上で、5文字の駅名と3文字の駅名を並べた下図が別に残っているそうですね。
88%という数字
なぜ仮名を漢字より小さくするのですか。
仮名は漢字に比べて字の形がまるく、四角い枠いっぱいに描くと大きく見えます。同じ大きさの枠に描いた漢字と並べたとき、見た目の大きさをそろえるには、仮名を少し小さくする必要がある。書体によって違いますが、本文用の書体だと90%前後が多いです。
駅名標の場合は、もう一つ理由があります。駅名は仮名が多いので、仮名を大きくすると駅名ごとの行の長さの差が目立つ。88%という数字は、見た目の大きさと行の長さの両方を見て決めたのだと思います。
仮名だけを大きく見せると、駅名ごとの長さの違いがそのまま目に入ってきます。
久住 健
写植の原字で直していたこと
久住さんが描いた原字(JB-T-0315)には、朱で修正の指示が入っています。
あれは監修者の字です。48mmの原字を縮小して文字盤にすると、はねの先の細い部分がつぶれてしまう。だから原字の段階で、先端を少し太めにしておけ、という指示です。逆に払いの角度は、縮小すると急に見えるので、少し寝かせる。原字の大きさで見て正しい形と、印字されたときに正しく見える形は違うんです。
数字を設計し直す
案内表示用の数字(JB-T-0322)では何を変えたのですか。
6と9、1と7です。番線や階数の表示は、遠くから、しかも一瞬で読まれます。6と9は開口部を広くとって、回転しても同じ形にならないようにしました。1は頭の払いを短く、7は横画を長くして、形の違いを大きくしています。
駅名標の原図を描いた人たちがやっていたことと、考え方は同じです。文字だけを見て美しいかどうかではなく、その文字が置かれる場所と距離で読めるかどうかを基準にする。原図の88%という数字も、そういう判断の記録だと思います。



