触れる数値 — ダイヤル、スライダー、キーボード
手応えは目盛りの代わりだった
音響機材のダイヤルを回すと、指先に小さな段差を感じる。この“クリック”は、何段階回したかを目で確認しなくても伝えてくれる。暗いステージの上で、手元を見ずに音量を調整できるのはこのためだ。
本誌では、1クリックあたりの変化量を3段階に変えた試作機を作り、10人に目標値まで回してもらった。変化量が最も小さい条件では、狙いの値に届くまでの時間が平均で約1.6倍かかった。手応えが細かすぎると、かえって目で確認する回数が増えた。
画面は手応えをどう補うか
画面のスライダーには段差の感触がない。代わりに使えるのは、目盛りの表示、値の読み上げ、そして刻みに合わせて止まる動きだ。
試作機の画面には、ダイヤルの位置を波形で表示した。値そのものより、変化の方向と大きさが一目でわかることを優先した表示だ。参加者からは「数字より波形のほうが、行き過ぎたことに早く気づける」という声があった。
キーボードはもう一つのダイヤル
矢印キーを1回押すと1刻み動くスライダーは、クリック感のあるダイヤルとよく似ている。押した回数がそのまま変化量になるので、画面を見なくても操作の結果を予測できる。
本誌のサイトでは、研究ページのグラフの指標切り替え、記事一覧の表示切り替えなど、すべての操作をキーボードだけで行えるようにした。手応えのない画面で、手応えに最も近いのは、押せば必ず同じだけ動くという予測可能性なのだと思う。